表紙
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ダリのアトリエがあるポート・リガで1960年、この表紙のブロンズの原型が制作されました。蜜蠟で型を取りブロンズに鋳造し、ダリはこの中に幾つもの抽象的要素をはめ込んでいます。まず蜜蠟で型を取る時、真ん中に割れ目を造り、そこに蜂蜜と菓子を一切れ入れました。蜂蜜は旧約聖書の中では御心を象徴するそうです。この蜂蜜からキリストが誕生する。キリストの姿は金砂子を散らした板に描かれ、その周囲の金の針は光を表しています。その上部には純潔を象徴するメノウ、最上部には金の小像をあしらった貝殻が太陽の象徴としてはめ込まれています。下部には火口の様にウニの殻が口を開き、その周囲に585本の釘が散らばっています。これはダリと同じカタロニア出身の中世の神学者レイモン・リュルが人間の魂の種類を585に分けたものに習ったものであります。聖なるエレサレムを象徴する碧玉(ジャスパー)、エメラルド、紅縞メノウ、紅玉髄、黄玉(トパーズ)、緑柱石、緑玉髄、風信子石(ジルコン)、紫水晶とエルサレムの12の門をあらわす12個の真珠がはめ込まれています。 ⇒記録映画「アポカリプス」で見ることが出来ます。

世界各国から選ばれた7名の大画家が3点ずつ羊皮紙にヨハネの黙示録を描いている
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ダリ 1.聖体のパン 2.十字架のキリスト 3.釘のピエタ 藤田嗣治 1.天国と地獄 2.七つのラッパ 3.四人の騎馬の者

イヴ・トレモア 1.人間の滅亡 2.パトモスの鷹 3.アポリオン レオノール・フィニ 1.海の獣
2.天使の闘い 3.女の出現

ベルナール・ビュッフェ1.光の子羊2.聖ヨハネ3.皮を剥がれた子羊
ジョルジュ・マチュウ1.私は女王に
2.この後私は 3.開かれた天
オシップ・ザッキン1.聖なる町エルサレム
2.命の木と命の水 3.書物の奉納
デカリ 画家7名と文学者7名の肖像

ジャン・コクトーは自分で両面に挿絵を描いています。“黙示録の天使”。イヴ・トレモアがもう一枚,文学者ジャン・ロスタンのために“超人”を描いています。そしてミシェリーヌ・ニコラのカリグラフィー、アポカリプス。
黙示録(APOCALYPSE)
について
そもそもアポカリプス(黙示録)とは何?と云う方も多いと思います。“地獄の黙示録“オーメン”など黙示録をテーマにした映画も数多く有りましたが、キリスト教文化圏でない(純粋のキリスト教徒は日本の人口の約1%)世界でも稀な少ない国です。よって聖書にもなじみが少ない日本人にとっては理解しにくいテーマかも知れません。黙示とは隠されているものを明らかにすると云うことだそうです。幾つか黙示録があるのですが特にヨハネの黙示録が有名でこの本もそれをテーマにしています。興味のある方は管理人のつたない説明よりも多くの方が黙示録について詳しくWebサイトにUPしていますのでそちらをご覧下さい。
アポカリプスの内容
このアポカリプスは大きく分けて3つの章に分かれています。
第1章
聖ヨハネの黙示録を七人の現代を代表する画家のオリジナル絵画を(一人各3点)羊皮紙に描き収録。この黙示録の文章はミシュリーヌ・ニコラ嬢(1958年)当時29歳が3年間を費やして羊皮紙に95,000文字を筆書したものです。彼女は小児麻痺のため下半身が完全に麻痺している女性ですが、制作者ジョセフ・フォレ氏は彼女の書く文字の力強い美しさにうたれ、この記念碑的な本の筆写と云う大任を彼女に託したのです。
左から ミシュリーヌ・ニコラ、 ダリ、 藤田嗣治、 トレモア、 フィニ、 ビュフェ、 マチウ、 ザッキン
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羊皮紙について
管理人も羊皮紙についてはこの本に接するまであまり良く知りませんでした。紙が普及する前にパピルスが入手出来ないところではよく使われたそうです。日本ではあまりなじみのない素材です。最近は需要が少なく、高価な素材ですがこの本には150枚の羊皮紙が使われています。記録映画「アポカリプス」に出てくる工程を見ると大変な作業の結果から製品化されるのが判ります。この本のために150枚を厳選するのに何と30万頭の羊の皮を要したそうです。
ダリの「聖体パン」と「釘のピエタ」
前項に記載したダリの作品3点内、「聖体のパン」はこの本の第1ページに収録されるため羊皮紙でなく特別な技法で作られました。唯一紙で、オーベルニュ産の原料をパリに運び、ダリ自ら製紙し、水彩で描きました。紙と云っても素材をドロドロに溶かし、中に釘、メダル、時計、臼歯、外科医が使う副木、等様々なものが象徴的に埋め込まれています。特に関心したのは、画像でも判りますがキリストの周囲を放射状に針が埋め込まれていて、針が腐食し、茶色に染まったように見えますが、針は金針で腐食しません。ダリは初めからそのような効果を狙って制作したものです。管理人は1995年12月スイスの保税倉庫でこの作品に初めて出会い、以後数十回に渡り接触する機会が有りましたが、制作時(1961年)と変化がないことが分かり、奇人?ダリの才能に改めて感銘したものです。釘のピエタもダリらしい?特殊な技法で、釘を詰めた爆弾や銃を用いて銅板を造り羊皮紙に転写し純金などを用いて彩色をしています。
藤田嗣治 (レオナール・フジタ)
藤田嗣治に関しても多くの方が詳しくHPにUPしています。この本に描かれいる3点は1959年に藤田が洗礼を受けてカトリックに帰依し、レオナール・フジタとなり、初めて描いた作品と云われています。記録映画「アポカリプス」にはこの絵を描く藤田と、当時のアトリエが記録されています。藤田のモチーフである猫と女の猫や、人形など当時の彼のアトリエの様子が詳細に記録されています。この3点の絵は現在、日本の県立山梨美術館に収蔵されています。残念な事に少しずつ散逸して完全な形で残す事は難しいようです。これも美術品の運命?かも知れません。

記録映画「アポカリプス」
このヨハネの黙示録の制作工程をジョセフ・フォレが当時高価なカラー・フィルムに記録して、映画として残しています。各々の作家の作品制作現場(藤田嗣治の当時のアトリエなど)を記録した貴重な資料です。
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Part 1 (約17分)
フランス語ナレーション
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